こんにちは
「ホームスチール風に通勤する男」ことキーユです。
先日、地方出張先で事務作業をするためにふと立ち寄った喫茶店でちょっとだけ変な体験をしたので記事にしてみます。
不思議なおばあちゃんの経営する不思議な喫茶店
その日は生憎の曇り空。
急な内勤仕事が入り、近くの喫茶店をナビで探すとすぐ近くに良い感じのお店発見。
駐車場もあるので助かります。
すぐに突入。
ファンキーおばば登場!
カランカラーン
というあの音を聞きながら店内に入ると、奥から
「カランカラーン」
というまさかの声が。
「いらっしゃい、あちらの席にどうぞ」
奥の厨房から出てきたのはエプロン姿の小さなおばあちゃん。
年齢は60代後半〜70代中盤くらいでしょうか。
髪型は料理人だからこその意地のポニーテール、しわくちゃの愛くるしい笑顔になかなかデカめのオレンジ色のサングラス、真っ白いロングワンピースに真っ白いエプロン。
しゃがれられる限界点までしゃがれた声。
スレンダーなバディも健在。
若返るとこんな感じです。
一目で魅力的で魔力的な方だなと思わせる不思議なオーラに僕はワクワクし始めていました。
この喫茶店、何かあるぞ。
しかし、席に通して頂き座ってコーヒーを注文、砂糖とミルクの確認…。
当然と言えば当然ですが普通の喫茶店でのやり取りが続きます。
ちなみに店内は喫茶店としては広く、白を基調とした落ち着いた雰囲気と年季を感じさせるレトロな空気感が混在していており、素敵という形容詞がどこまでも似合います。
僕の他には上品な雰囲気を醸し出すおばちゃまがカウンター席に一人。
恐らく常連であろう佇まいです。
コーヒーが遅い。とにかく遅い
店内の角、僕の席からよく見える場所には30センチの高さの棚が置いてあり、見たこともない皮で作られた財布や小さいバッグが5、6個陳列されていて「4000円」など値札が付いていました。
皮の模様から、火は吐けないものの飛べるタイプの竜の皮で作った商品だとすぐに気付きました。
そうこうしている間にパソコンが立ち上がったので仕事に取り掛かります。
……………。
……………。
……………。
(コーヒーこないなぁ)
ルーズな癖に待てない男のダメな面が顔をのぞかせたその時、後ろからおばあちゃんの声が!
「はい、コレ良かったら」
テーブルに優しく置かれたのは週刊ポスト!
そうそうそう、毎週これが楽しみでね〜!
今日はいつもと趣を変えて最後のページから逆に読んでいって最後に目次を見ることにしようかな〜!
…いやいや!
仕事中です!
女性器アートっていう衝撃的な見出しは気になるけど週刊ポスト読んでる場合じゃないから!
てか、コーヒー!
という内心の動きを悟られないように
「ありがとうございます(ニコッ)」
と返す爽やか社会人。
さて、仕事仕事。
……………。
……………。
……………。
(コーヒーこないなぁ)
ルーズな癖に待てない男のダメな面が顔をのぞかせたその時、後ろからおばあちゃんの声が!
優しく置かれたのは変なチョコ!
「これね、去年の夏にオーストラリアを旅行した時に買ってきたチョコなの、良かったら食べて」
そうそうそうそう、渇いた喉にはオーストラリアのチョコが一番!
昔カンガルーに育てられてたこと思い出して泣きそうになるけど、それを包み込んじゃう甘さが堪らないんだよなぁ!
…いやいや!
チョコいらねえ!色は惜しい!
あと俺アーモンド苦手なの知ってるでしょ⁉︎
しかも去年の夏って品質劣化大丈夫かなぁ!心配!
もう、おばあちゃんたら!
しかしそこはもちろん
「へえ、オーストラリアですかー、行ってみたいっすね〜(ニコっ)」
と、すかさず反応。
さて、仕事仕事。
するとここでお待ちかねのコーヒーの登場!
待ってました!
「お待ちどうさま」
優しく置かれたコーヒー。
黒めの液体、コーヒーカップらしきカップ、その中に入れられた液体の色は黒め。
ほのかに香る芳ばしい香りは缶コーヒーを買った時の匂いによく似ています。
そう、これがコーヒー!
ずず
美味しい。
待ち焦がれた分美味しさが増すのは恋愛と同じだな。
なんてことをスペイン語に翻訳しながら考える僕。
待ちに待ったコーヒーを体内に取り込み、より一層集中力がアップした気になって仕事に取り掛かります。
…コーヒーが来てから26秒後。
早くも背後からおばあちゃんの声が!
「これ良かったら飲んで」
優しく置かれたのは謎の液体!
「これね、漢方のほにゃらら草を煎じたお茶なんだけどね、いいのよ」
わぁ!よさそう!
コーヒーの到着から僅か26秒ジャストでの謎茶の襲来。
コーヒーの残量は91%。
その横には週刊ポストと謎チョコ。
只今の湿度は24%。
天気は曇り、気圧はまあまあ、株価は昨日より円安。
これらを踏まえ、ブログ記事にすることを決意する僕。
「ありがとうございます、飲んでみます」
平凡な返ししか出来ない若輩者。
とりあえず謎茶を飲む。
わお、よさそう!
何かによさそうな味。
美味しいかどうかはよく分からないものの、コーヒーと相殺し合う味であることは直ちに分かりました。
でも、なんかよさそう!
ここからは仕事をしながら、コーヒーを飲み、謎茶を飲むというサイクルです。
時々コーヒー連発、謎茶連発やコーヒー3連発からの謎茶4連発などフェイントも取り入れて液体をも惑わせるファンタジスタ。
すると………。
背後からババアの声!
こ、今度はどんなことが起こるのかな!
あえて振り返らずに!
驚きを味わうぞ!
来い!さあ来い!
「これね…」
なんか雑に置かれたのは
………白い石…!
大きさはシャム猫のウンコくらい…!
予想のハードルをジャンボジェットで越えてくる展開に僕は打ち震えます。
「この石ね、凄く良い石なのよ。とてもツルツルしてるでしょ?触ってみて。」
指先でさわさわ。
ほんとだ、思ったよりツルツルしてる。
どうしよう、どのくらいの時間撫でればいいのかな。
どうしよう、ツルツル以外に感想浮かばねえ!
「凄くツルツルしてますねぇ、石じゃないみたいです」
己の無力さを呪いたい。
「ね!これ凄い良いのよ。なんでこんなに白いのかしらね」
なんでかしら。
しかし、この石には神々の力が宿ることは一目瞭然です。
これまでいくつもの生と死を、運命を、輪廻を見てきたであろう白い石。
そのツルツル加減はまるで世の中の哀しみを全て受け流すかのようです。
とにかく、この喫茶店は神話の領域に踏み込んでいるようです。
そういえばおばあちゃん、どことなくゼウスに似てるような気も。
すぐにカウンター内に戻って常連のおばちゃまと談笑するおばあちゃん。
何事もなかったように仕事を続ける僕。
入れ替わり立ち代りやってくる愉快なお客さん達。
転んでアバラが痛いので今日は仕事を休んだと言ってナポリタンを頬張るひょろひょろの女の人。
それを怒鳴りつけて叱るおばあちゃん…。
その光景を意に返さずママ友の悪口に花を咲かせるママ達。
外から聞こえてくる下校の子供達の笑い声。
平和な昼下がり。
どこまでも続いていきそうな日常。
遠くの森で胸を叩く若めのゴリラ。
触られてないのに「触るな!」と叫ぶロボット。
いつの間にか、仕事が面倒になってしまいました。
ミートソースを注文して、コーヒーをお代わり。
相変わらずのスピード感にも既に慣れっこ。
歴史と人生の詰まった美味しいパスタで空腹を満たして、出発です。
かれこれ三時間以上居座ってしまいました。
また来たいなと思いながらドアを開けます。
カランカラーン。
ちなみに石もチョコも全部置いて帰りました。
この記事を書いたライター
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1985年生まれ。
ギャグ記事やWEB、音楽、ゲーム、育児などを書いています。
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著書:新種発見!69匹の愉快な生き物図鑑
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